Gemini API を使い始めてしばらくすると、 「これ、いくらまで使ったら止まるんだろう?」 「APIキー単位で課金の上限(キャップ)をかけられないの?」 と不安になる方は多いと思います。
実際に「gemini api 課金 上限」「gemini api 制限」などで検索してみると、 レート制限や Budgets の説明は出てくるものの、核心的な答えが書かれている記事はほとんど見当たりません。
この記事では、実際に Gemini API を触り、 Google Cloud の Billing 画面や Budgets 設定まで確認した上で、
- Gemini APIキーに課金キャップは設定できるのか
- なぜそれができないのか
- ではどうやって「事故」を防ぐのか
を、結論から整理します。
結論:Gemini APIキーに「課金キャップ」は設定できません
まず結論です。
Gemini API では、APIキー単位で課金の上限(キャップ)を設定することはできません。 また、一定金額に達したら自動で課金が止まる仕組みもありません。
できるのは、課金額に対する「アラート(通知)」までです。
この点をはっきり書いている日本語記事はほとんどありませんが、 実際に設定画面を追っていくと、この仕様が分かります。
よくある誤解①:レート制限=課金キャップではない
※ Gemini API の「Google AI Studio」の画面。ここではアラートもキャップもかけられない
Gemini API の管理画面には、
- RPM(1分あたりのリクエスト数)
- TPM(1分あたりのトークン数)
- RPD(1日あたりのリクエスト数)
といったレート制限の設定があります。
一見すると「これで上限をかけられるのでは?」と思いがちですが、 これは課金額の上限ではありません。
レート制限はあくまで、
- 無限ループ
- バグによる大量リクエスト
を防ぐためのものであり、 「○円までで止める」ための仕組みではない点に注意が必要です。
よくある誤解②:IAM や APIキー設定にキャップ項目はない
※ GCP側のサイドバー。ここのBillingをクリックする必要がある
「APIキー単位で制限できるのでは?」と思って IAM や APIキーの設定を探しても、課金上限に関する項目は存在しません。
これは Gemini API の課金が、
- APIキー単位
ではなく
- Google Cloud の請求アカウント/プロジェクト単位
で管理されているためです。
できるのはここまで:Budgets(予算)によるアラート設定
※ Billingを選択しているところ
Gemini API の課金を管理できる唯一の場所が、 Google Cloud の Billing → Budgets & alerts(予算とアラート) です。
※ Budgetアラートをかけている画面。4000円で設定している。
ここでは、
- 月○円まで、という「予算」を設定
- 50%、80%、90%などでメール通知
を行うことができます。
ただし重要なのは、 Budgets は「通知」だけで、課金を自動停止する機能ではない という点です。
なぜ自動停止(キャップ)が用意されていないのか
これは Gemini API に限らず、Google Cloud 全体の設計思想によるものです。
Google Cloud は、
- 業務システム
- 本番サービス
- SLA が重要な環境
で使われることを前提としています。
そのため、 「知らないうちに API が止まってサービスが落ちる」 という事態の方が、 「課金が継続する」よりも重大な事故と見なされます。
結果として、
- 自動停止はしない
- 判断と停止は利用者側に委ねる
という設計になっています。
現実的な対策:ZIDOOKA!的おすすめ運用
では、どうすれば安全に使えるのか。 実際に運用するなら、次の組み合わせが現実的です。
1. Budgets で低めの予算を設定
- 検証用:月300〜500円
- 本番用:月1,000〜3,000円
2. 90%アラートを必ず有効化
- 「気づいた時には手遅れ」を防ぐため
3. アラートが来たら APIキーを無効化
- API Keys から該当キーを無効化
- もしくは Gemini API 自体を無効化
4. プロジェクトを分ける
- 検証用プロジェクト
- 本番用プロジェクト
これだけで、課金事故の確率はほぼゼロになります。
まとめ
- Gemini APIキーに課金キャップは設定できない
- 自動停止の仕組みも存在しない
- できるのは Budgets によるアラートまで
- だからこそ「止める前提の運用」が重要
「制限がなくて怖い API」なのではなく、 「エンタープライズ前提で、判断を委ねる API」 だと理解すると、 付き合い方が見えてきます。
References:
- Google Cloud Billing Documentation https://cloud.google.com/billing/docs
- Gemini API Pricing https://ai.google.dev/pricing